台東区の一葉の記念碑を訪ねて

前回のブログで紹介した一葉記念館の周辺には、一葉にちなむ記念碑がいくつか建っているので紹介しましょう。

まず、記念館の向かいに建つ一葉記念碑。

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これは昭和11年7月に地元の有志により菊池寛の撰文で建てられた碑が戦災で破損したので昭和24年に再建されたものです。碑文を読んでみましょう。

「ここは明治文壇の天才樋口一葉旧居の跡なり。一葉この地に住みて「たけくらべ」を書く。明治時代の竜泉寺町の面影永く偲ぶべし。今町民一葉を慕ひて碑を立つ。一葉の霊欣びて必ずや来り留まらん。」


碑文には、上の表記に続けてこのようにあります。

「菊池寛右の如く文を撰してここに碑を建てたるは、昭和十一年七月のことなりき。その後軍人国を誤りて太平洋戦争を起し、我国土を空襲の惨に晒す。昭和二十年三月この辺一帯焼野ヶ原となり、碑もともに溶く。」


戦災でこの一帯は焼け野が原になったため、一葉が暮らした竜泉の町並みが様変わりしているのは当然といえば当然と言えます。さらに碑文は続きます。

「有志一葉のために悲しみ再び碑を建つ。愛せらるる事かくの如き、作家としての面目これに過ぎたるはなからむ。唯悲しいかな、菊池寛今は亡く文章を次ぐに由なし。僕代って蕪辞を列ね、その後の事を記す。嗚呼。
 昭和二十四年三月
 菊池寛撰
 小島政二郎補並書
 森田春鶴刻」


小さな碑ですが、戦争の歴史に翻弄された歴史の重みを感じさせます。

碑の裏面には、賛同者の氏名がずらりと刻まれています。

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記念館の向かいにある一葉記念公園には、「一葉女史たけくらべ記念碑」があります。これは昭和26年11月、地元の一葉記念講演協賛会によって「たけくらべ」を記念して建てられたものです。

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碑の中央に、「一葉女史たけくらべ記念碑」、その両脇に、一葉の旧友歌人である佐々木信綱が作った歌二首が、信綱自身の筆跡で刻まれています。

「紫の古りし光にたぐへつべし
君ここに住みてそめし 筆のあや」

「そのかみの 美登利真如らも この園に
来あそぶらむか 月白き夜を」


記念館が建っている場所は、かつて一葉が暮らした竜泉の小間物屋のすぐ近くにあたります。実際に小間物屋が建っていた場所を訪ねてみました。旧居の住所は、下谷竜泉寺町368番地。今の竜泉3-15-2にあたります。

旧居跡に往年の面影はありませんが、標識が立っています。下の写真の真ん中にある電柱のわきに、碑が見えます。レンガ色のマンションがあるあたりが、一葉の住んでいた場所にあたります。

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解説板とともに「樋口一葉旧居跡」と刻まれた石碑がたっています。これは昭和35年10月に建てられ、一度破損したので再建されたものとのことです。

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今回訪問できませんでしたが、付近の千束稲荷神社には一葉の胸像と日記の直筆碑文があるというので、近いうちに散策したいと思います。

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